シェルブールの雨傘 / ミシェル・ルグラン
梅雨の季節になりました。傘といえば思い出すのが天才ミシェル・ルグランのこの曲です。全編歌で綴られた台詞。最初は違和感がありますが、そんなものはすぐに忘れてストーリーに引き込まれてしまいます。フランス語の美しさ、音楽との相性など目を見張るものがありました。
映画はフランスの小さな港町・シェルブールで展開する20歳のギィと16歳のジュヌヴィエーヴの悲しい恋物語。カトリーヌ・ドヌーヴが可憐で美しい。後の「昼顔」で演じる妖しい色香はまだそこには感じられません。アルジェリア戦争によって引き裂かれた恋人たち。戦争はいつの時代も悲惨です。
最も切ないシーンはギィが出征していく駅の別れのシーンでした。ギィの「モーナムール」ジュヌヴィエーヴの「ジュテーム、ジュテーム」と繰り返し繰り返し歌うシーンがとても印象的で、そこに主題曲がかぶさってきてもう、いっしょに泣きたくなるほど切なく悲しい思いがあふれてしまいます。
最も記憶に残るシーンは最後の場面。
まだ二人が恋人時代に「子どもができたら名前はフランソワにしよう」「将来はガソリンスタンドをやろう」と他愛もない話をしますが、これがエンディングの伏線です。お互いの消息がわからないまま、それぞれの家庭に子どもが生まれました。(ジュヌヴィエーヴの娘は出征前にできたギィの子)
4年半後、雪のクリスマスの夕暮れ。
娘を連れてひさしぶりにシェルブールを訪れ、ギィのガソリンスタンドへ偶然立ち寄るジュヌヴィエーヴ。はっとして気が付くギィ。一瞬の沈黙、見つめ合う二人。ぎこちない会話が続き、ギィは「もう行ったほうがいい」と告げる。立ち去る車には娘の「フランソワーズ」、入れ違いに帰ってきたギィの妻と息子の「フランソワ」。忘れられない「恋の思い出」とささやかな幸せだが「大切な現実」が交差する。そして雪が降り続く中を主題曲が流れ、まさに切ない切ないエンディング。(ハッピーエンドではないのです!)
この映画で初めてフランス語って「女性と男性では名前が違うんだ!」ということを知ったのでした。(笑い)
シェルブールの雨傘は、ぼくが青春時代に出会った忘れられない映画音楽の筆頭です。高校時代に見た数少ない映画は、必ずどの年にどの映画館で見たかを覚えているのですが、この映画だけはなぜか記憶にありません。映画館を出た後もそれほど映画に浸っていたのでしょう。楽器店に寄りサウンドトラックのアルバムを注文して帰ったのも初めてのことです。あのアルバムはいったいどこへ行ってしまったのでしょう?今DVDで買い直そうかと悩んでいるところです。 |
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